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株式会社の設立方法

令和3年5月20日
弁護士 秋 重  実

【はじめに】

 今回は、株式会社の設立のしかたについて解説してみたいと思います。
 株式会社の設立には、設立時に発行する株式の全部を発起人のみが出資して株主となる「発起設立」(会社法 2511号(以下、法令名省略))と、発起人に加え、株式を引き受けるものを募集する「募集設立」(同項 2号)があります。
 今回は、実務において圧倒的に多い「発起設立」の方法について説明します。
 

 

1.基本事項の決定

 株式会社を設立する際には、会社の基本事項である会社名(商号)、事業目的、本店所在地、事業年度、資本金、株式譲渡の有無、役員構成などを定めておく必要があります。
 また、会社設立登記の際には、1cm以上3cm以内の正方形に収まる代表者印(会社の実印)が必要になるため、用意しておく必要があります。その他、銀行印や社印(角印)があると便利です。
 

2.定款の作成

(1) 「定款」とは
 株式会社を設立するには、発起人(資本金の出資など会社設立を企画し手続きをする者)が定款を作成し、発起人が数名いる場合には、その全員が署名、または記名押印をする必要があります( 261項)。
 ここで「定款」とは、株式会社の組織・運営に関する基本的事項を定めた自主規範です。定款は書面または電磁的記録によって作成することができます( 262項、会社法施行規則 224条)。
(2) 定款の記載事項
 定款に記載する事項にはルールがあり、①絶対的記載事項、②相対的記載事項、③任意的記載事項に分けられます。
 ① 絶対的記載事項
 絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項であり、記載しなければ定款自体が無効になる事項です。
 具体的には、ⅰ目的( 271号)、ⅱ商号(同条 2号)、ⅲ本店の所在地(同条 3号)、ⅳ設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(同条 4号)、ⅴ発起人の氏名または名称および住所(同条 5号)、ⅵ発行可能株式総数を記載する必要があります。なお、発行可能株式総数については、定款作成時に定める必要はなく、設立登記申請時までに定めればよいことになっています( 371項)。
 ② 相対的記載事項
 相対的記載事項とは、定款で定めても定めなくてもよい事項であり、かつ定款で定めた場合にのみ効力が生じる事項です( 29条参照)。
設立手続との関係で重要な相対的記載事項は、金銭以外の財産を出資する現物出資( 281号)や設立費用( 284号)の規定などがあります。
 ③ 任意的記載事項
 任意的記載事項とは、定款に記載してもしなくてもよく、定款以外の方法で定めることによっても効力が生じる事項です( 384項、 3813項・ 40条)。
 例えば、設立時役員等の選任は、定款で定めることもできますが、発起人が定款外で選任することも可能です。
 

 

3.定款の認証

 定款を作成した後には、公証人の認証を受ける必要があります(301項)。定款の認証とは、上記の絶対的記載事項が記載されているか等、定款が適法に作成されているかの確認を行なうための措置です(公証人法26条)。定款の認証は、設立会社の本店所在地を管轄する法務局の公証役場で行います。
 発起人全員が実印を押印した定款3通(公証役場保管用・法務局提出用・会社本店保管用)、発起人全員の印鑑証明書、実印、定款認証手数料(52,000円程度)、4万円の収入印紙(ただし、電子定款の場合には収入印紙は不要です。)などを持参します。
 

4.資本金の払込み

 定款の認証後、発起人の個人口座へ入金または振込をすることが必要です(341項)。発起人が複数人いる場合には、発起人全員が代表となる発起人の口座に振込を行ないます。口座の残高が出資額分あるというのでは不十分であり、新たに払込み額の入金または振込をすることが必要です。
 設立時の出資額の制限は定められておらず、出資額が1円でも株式会社を設立することは可能です。ただし、資本金の額は会社の信用に直結するため、取引先等を考慮した金額設定を行う必要があります。
 

5.登記申請

 定款の作成、認証及び資本金の払込みがすべて終了し、株式会社の実体が形成されたら、本店の所在地を管轄する法務局に登記申請を行い、設立の登記を行います(9111項)。設立の登記の申請は、発起人ではなく、成立後の会社の代表者が行います(商業登記法471項)。
 設立登記の際に必要な書類として、登記申請書、登記免許税の収入印紙を貼付した台紙、定款、取締役の就任承諾書、払込証明書、取締役全員の印鑑証明書などがあります。
 登記申請が終わると、株式会社設立までの手続きは終了し、登記の申請日(法務局の申請書受理日)が会社設立の日になります。
 なお、会社設立後には、税金や社会保険、年金関係の手続を行なう必要があります。
 
 以上、簡単にではありますが、株式会社の設立方法をご説明させていただきました。さらに詳しい詳細を知りたい方は、下記の法務局ホームページ商業・法人登記申請手続記載の各種申請書記載例や参考文献をご確認ください。また当事務所では、会社の設立が迅速に進められるよう、会社の設立に詳しい司法書士と連携して設立のご相談を承っておりますので、会社設立をお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。
 
【参考文献】
法務局ホームページ商業・法人登記申請手続(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)
田中亘『会社法』(東京大学出版会・第3版・2021
江頭憲治郎『株式会社法』(有斐閣・第8版・2021

以上