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売主の瑕疵担保責任とは ~購入した建物に欠陥があった場合の買主の保護~

平成25年1月18日
弁護士 秋重 実

1 民法
 「瑕疵担保責任」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。カヒではなく,カシと読みます。売買の目的物に隠れた瑕疵があったときに,売主が買主に対して負う責任のことです(民法570条)。
 民法上,売主に瑕疵担保責任を追及するためには,売買の目的物に「隠れた瑕疵」が存在することが要件とされています。ここで「隠れた」とは,瑕疵の存在を買主が知らず,かつ,知らないことについて過失もなかったことを意味します。
 「隠れた瑕疵」が存在すると,買主は売主に対し,①損害賠償を請求することができます。また,②瑕疵があるために契約の目的を達成することができないときは,契約を解除することもできます(民法570条,566条1項)。
 ただし,これら買主の権利は,買主が事実を知った時から1年以内に行使しなければ消滅するとされ(民法570条,566条3項),また,目的物の引渡時を起算点として10年間の消滅時効にかかるとされています(判例)。
2 住宅の品質確保の促進等に関する法律
 これら民法上の規定は,住宅の売買においては十分な保護とはいえないため,平成11年に,「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が制定されました。
 同法では,新築住宅の売買契約において,売主は,「住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵」について,引渡時から10年間の瑕疵担保責任を負わなければならないとされています。
 さらに,責任の内容として,民法の定める契約解除・損害賠償の責任に加えて,①瑕疵修補,②修補と共にする損害賠償,③修補に代わる損害賠償の責任も認められています(品確法95条1項)。
3 住宅瑕疵担保履行法
 もっとも,いくら売主の責任を加重しても,売主に資力がなければ絵に描いた餅となってしまいます。そこで,平成19年,「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保履行法)が成立しました。
 これは,住品法に基づく瑕疵担保責任の履行の実効性を確保するため,売主が宅建業者である場合に,①住宅販売瑕疵担保保証金の供託,②保険契約の締結のいずれかの措置を講じなければならないとすることによって,新築住宅の売主に資力の確保を義務付けています。
4 ローマ法
 最後におまけとして,紀元前3世紀頃,ローマ帝国時代の瑕疵担保責任についてご紹介しておきましょう。
 「市場で奴隷を売却する場合,売主は,以下の瑕疵を自発的にそしてまわりの人に聞こえるような大声で知らせなければならなかった。(a) 病気,(b) 身体的な瑕疵,(c) 奴隷に放浪癖があるとき,(d) 奴隷がすでに逃亡したことがあった(そしてもちろん再び捕えられた)とき,(e) 他人の所有物に損害を与え,主人がまだ損害を賠償していなかったときである。」,「奴隷がたとえば盗癖がある,酒のみである,またはさいころ賭博好きであるといった性格面での欠点をもっていたとしても,知らせる義務はなかった。」(ウルリッヒ・マンテ著,田中実・瀧澤栄治訳「ローマ法の歴史」ミネルヴァ書房76頁)。
 今から2000年以上も昔に,すでに瑕疵担保責任という概念があったことも驚きですが,その内容についても,奴隷制を背景とした極めて興味深いものとなっています。